介護士必見!喀痰吸引の資格取得メリットと1年で出世した手順
夜勤中、たんが絡んで苦しそうな利用者様を前に、看護師を呼ぶことしかできず悔しい思いをしたことはありませんか?
喀痰吸引とは、自力で痰を出せない方に対し、吸引器を使って痰を取り除く医療行為のことです。以前は医師や看護師にしか許されていませんでしたが、現在は一定の研修を修了した介護士でも行えるようになりました。
実は私も、かつては「自分では何もできない」というもどかしさを抱える中堅職員の一人でした。しかし、喀痰吸引の資格を取得したことで現場での対応力が劇的に上がり、結果として正社員1年目で現場リーダーへと出世することができたのです。

本記事では、現役リーダーである筆者の実体験をもとに、介護士が喀痰吸引の資格を取得するメリットから、具体的な受講手順、費用や期間までを徹底解説します。
日々のルーティン業務から抜け出し、現場で頼られる存在としてキャリアアップしたい方は、ぜひ最後までお読みください。
介護士が行う喀痰吸引とは
結論から言うと、喀痰吸引は原則として医療行為ですが、所定の研修(喀痰吸引等研修)を修了し、認定を受けた介護士であれば現場で実施することが可能です。ここでは、喀痰吸引の基本的な定義と、取得できる資格の区分について解説します。
喀痰吸引の定義と目的
喀痰吸引とは、加齢や病気などの理由で自力で痰を出せない方に対し、専用の吸引器を使って気道内の痰や唾液を取り除く医療的ケアのことです。
痰が詰まると呼吸困難や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす危険性があるため、喀痰吸引は利用者様の命を守る非常に重要なケアです。介護現場において、看護師が不在になりやすい夜間帯などでも、資格を持った介護職員が迅速にたんの吸引を行える体制が強く求められています。
喀痰吸引等研修の3つの区分
介護士が喀痰吸引を行うために受講する「喀痰吸引等研修」には、対象者や実施できる行為の範囲によって第1号から第3号までの3つの区分が設けられています。
それぞれの違いは以下の表の通りです。
| 研修区分 | 対象となる利用者 | 実施できる医療的ケアの範囲 | 活躍できる主な職場 |
| 第1号研修 | 不特定多数の利用者 | 口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引 胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養 | 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの施設全般 |
| 第2号研修 | 不特定多数の利用者 | 口腔内・鼻腔内の喀痰吸引 胃ろう・腸ろうの経管栄養 (※気管カニューレと経鼻は不可) | グループホーム、有料老人ホームなどの施設全般 |
| 第3号研修 | 特定の利用者(重度障害者など) | その特定の利用者に必要な行為のみ(個別性が高い) | 訪問介護、障害者支援施設など |
介護施設で幅広く活躍し、キャリアアップを目指すのであれば、実施できるケアの範囲が最も広い「第1号研修」の取得を目指すのが一般的です。
自分が働いている施設の利用者はどのような方が多いかによって変わります。
介護士が喀痰吸引の資格を取得するメリット
結論から言うと、喀痰吸引の資格を取得する最大のメリットは、夜勤などの現場のピンチに強く、施設長や同僚から高く評価される「替えのきかない人材」になれることです。
ここでは、介護士が現場で直面する課題を解決できる3つの具体的なメリットを解説します。
対応できる業務の幅が広がるから
喀痰吸引の資格を取得すべき最大の理由は、看護師が不在の状況でも自分自身で利用者のケアを完結できる業務の幅が広がるからです。
多くの介護施設では、夜勤帯に看護師が配置されていないか、オンコール(電話待機)対応となっています。たんが絡んで苦しむ利用者様を目の前にしても、無資格の介護士は看護師の到着を待つことしかできません。
資格を取得すれば、そうした緊急時や夜間帯でも、自身の判断と技術で迅速にたんの吸引を行うことができます。「自分で対応できる」という自信は、夜勤業務の不安を大きく軽減してくれます。
施設からの評価が上がり昇格しやすいから
医療的ケアができる介護士は施設にとって非常に貴重な存在であるため、施設長や管理者からの評価が上がり、リーダー職などへ昇格しやすいからです。
施設側から見れば、喀痰吸引ができる職員がシフトにいるだけで、夜間や緊急時の安全体制が格段に向上します。「この人に任せれば現場が回る」という信頼に直結するため、一般の介護士の中から頭一つ抜け出し、フロアリーダーや主任などの役職に抜擢される可能性が高まります。
給与アップや処遇改善につながるから
資格取得によって手当が支給されたり、昇格による基本給のベースアップが期待できるなど、ダイレクトな給与アップにつながるからです。
施設によっては「喀痰吸引資格手当」を毎月数千円〜1万円程度支給しているところもあります。さらに、国が推進する「介護職員処遇改善加算」などの制度においても、高度なスキルを持つ職員や役職者にはより多くの手当が配分される傾向にあります。スキルアップが確実に収入へ直結するのは、モチベーションを保つ大きな要素です。
喀痰吸引の資格を取得する際の注意点
結論として、喀痰吸引の資格取得には大きなメリットがある一方で、人の命に関わる重い責任と、実地研修のハードルという2つの注意点が存在します。
受講を決める前に、以下の厳しい現実もしっかりと理解しておきましょう。
医療行為に対する強い責任が伴う
喀痰吸引は、一歩間違えれば気道を傷つけたり、呼吸困難を悪化させたりする危険性を伴う立派な「医療行為」です。
研修で知識と技術を学ぶとはいえ、実際に現場でチューブを挿入する瞬間は、ベテランであっても強い緊張とプレッシャーを感じます。「なんとなく取っておこう」という軽い気持ちではなく、利用者様の命を預かっているという強い責任感と覚悟が求められます。
実地研修先の確保が必要になる
喀痰吸引等研修を修了するためには、座学(基本研修)だけでなく、実際に利用者様に対して吸引を行う「実地研修」をクリアしなければなりません。しかし、この実地研修の受け入れ先を見つけるのが一つの壁となります。
基本的には自身が勤務する施設で実地研修を行うのが一般的ですが、施設側に指導できる看護師がいなかったり、対象となる利用者様がいなかったりする場合は、他の施設に協力を依頼する必要があります。事前に自施設の施設長や看護師に相談し、実地研修の環境が整っているかを確認しておくことが重要です。
正社員1年目で出世した筆者の実体験
ここからは、実際に資格を取得し、キャリアアップを果たした私自身のリアルな体験談をお伝えします。喀痰吸引の資格は、単なる「知識の証明」ではなく、私の介護士としてのキャリアを劇的に変える転機となりました。
資格取得前のもどかしい現場経験
私は未経験から介護の世界に飛び込み、無我夢中で業務を覚えていきました。しかし、正社員になって半年が過ぎた頃、強烈な無力感に襲われる出来事がありました。
夜勤中、担当していた利用者様のたんが絡み、チアノーゼ(酸欠で顔や唇が青紫になる状態)を起こしかけてしまったのです。私は慌てて遅番の看護師を呼びましたが、到着までの数十分間、苦しむ利用者様の背中をさすることしかできず、自分の無力さに涙が出そうになりました。
「もっと知識があれば、技術があれば、目の前の人をすぐに助けられるのに」
その夜の悔しさが原動力となり、私は喀痰吸引等研修を受講することを決意しました。
資格取得後に変わった周囲の評価と自身のキャリア
休日の合間を縫って研修に通い、自施設の看護師に頭を下げて実地研修に付き合ってもらい、無事に第2号研修を修了しました。
現場で実際に吸引を行えるようになると、劇的な変化が訪れました。夜勤の不安が消えたのはもちろんですが、何より変わったのは「周囲からの目」です。
自分でも吸引ができるようになると看護師やベテラン介護士の負担を減らすことができ、少しずつ頼ってもらえるようになりました。
それから一年後、僕は管理職をやっています。
喀痰吸引がキャリアアップの一助になったと思っています。
もし今、あなたが現場で「もっと自分にできることはないか」ともどかしさを感じているなら、喀痰吸引の資格は間違いなくその壁を突破する強力な武器になります。
厚生労働省:喀痰吸引等制度について(https://www.mhlw.go.jp/content/000464962.pdf)
喀痰吸引等研修を受講する手順
結論として、介護士が喀痰吸引の資格を取得するには「事業者探し」「基本研修」「筆記試験」「実地研修」という4つのステップを順番に進める必要があります。
ここでは、実際に資格を取得するまでの具体的な手順を解説します。
1. 登録喀痰吸引等事業者を探す
まずは、都道府県から指定を受けた「登録喀痰吸引等事業者(研修を実施できる機関)」を探し、受講の申し込みを行います。
民間の介護スクールや福祉系の専門学校、各都道府県の社会福祉協議会などが実施しています。通いやすさや、基本研修のスケジュールが自分の勤務シフトと合わせやすいかを確認して選びましょう。
2. 基本研修を受講する
申し込みが完了したら、「基本研修」を受講します。基本研修は「講義」と「演習」の2つに分かれています。
- 講義(座学): 喀痰吸引や経管栄養に関する基礎知識、感染予防対策などの医療的知識を約50時間学びます。
- 演習(シミュレーター): 人形(シミュレーター)を使用して、実際に吸引の手順や機器の扱い方を何度も反復練習します。
3. 筆記試験に合格する
講義をすべて終えた後に、知識の定着を確認するための「筆記試験」を受験し、合格基準を満たす必要があります。試験の難易度はそれほど高くなく、講義の内容をしっかりと復習しておけば十分に合格できるレベルです。万が一不合格になっても、再試験を受けられる機関がほとんどです。
4. 実地研修を修了する
筆記試験と演習をクリアしたら、いよいよ「実地研修」へと進みます。実地研修では、指導者(所定の研修を受けた看護師など)の立ち会いのもと、実際の利用者様に対して喀痰吸引や経管栄養を実施します。
規定の回数(口腔内吸引の場合は10回以上など)をミスなく安全に実施できれば、研修の全行程が修了となり、修了証明書が発行されます。
厚生労働省:各都道府県の研修を実施できる機関(001594820.pdf)
喀痰吸引等研修の受講費用と期間の目安
資格取得にあたって気になる「費用」と「期間」について解説します。保有している資格によって免除される科目があり、条件が大きく異なります。
受講費用の相場
喀痰吸引等研修の受講費用の相場は、約5万円〜15万円程度と幅があります。これは、介護職員初任者研修や実務者研修をすでに修了しているか、あるいは過去に医療的ケアの科目を履修しているかによって、受講すべきカリキュラムが免除されるためです。
特に、平成28年度以降に「介護福祉士実務者研修」を修了している方は、喀痰吸引の「基本研修」がすでに修了扱いとなるため、実地研修の費用(約3万〜5万円程度)のみで取得できるケースが多くなります。
取得までにかかる期間
ゼロから基本研修と実地研修のすべてを受講する場合、取得までにかかる期間の目安は約2ヶ月〜4ヶ月程度です。
働きながら週に1〜2回スクールに通うスタイルが一般的です。ただし、実地研修先の調整に時間がかかると、修了までの期間がさらに延びることもあるため、早めに施設側とスケジュールをすり合わせておくことが大切です。
介護士の喀痰吸引に関するよくある質問(FAQ)
最後に、喀痰吸引に関して現場の介護士からよく寄せられる疑問にお答えします。
Q. 喀痰吸引は資格なしでもできることはありますか?
結論として、資格を持たない無資格の介護士が喀痰吸引を行うことは法律で禁止されており、一切できません。
ただし、吸引自体はできなくても、看護師が吸引しやすいように利用者様の体位を整えたり、声をかけて安心させたりといったサポート業務を行うことは可能です。
Q. 介護福祉士を持っていれば喀痰吸引はできますか?
介護福祉士の資格を持っているだけでは、すぐに喀痰吸引を行うことはできません。
実務者研修で「基本研修(座学・演習)」は修了していますが、現場で実施するためには、別途「実地研修」を受講して修了証明書を受け取り、都道府県に「認定特定行為業務従事者」として登録の手続きを行う必要があります。
Q. 独学で喀痰吸引の資格は取れますか?
独学で喀痰吸引の資格を取得することはできません。
医療行為であるため、必ず都道府県の指定を受けた「登録喀痰吸引等事業者」が実施するカリキュラムを受講し、看護師等の指導のもとで演習や実地研修をクリアする必要があります。
まとめ:喀痰吸引の資格で介護士としてのキャリアを切り開こう
本記事では、現役リーダーの実体験を踏まえ、介護士が喀痰吸引の資格を取得するメリットや手順について解説しました。改めて重要なポイントを3つにまとめます。
- 対応できる業務が広がり、夜勤や緊急時に頼られる存在になる
- 現場の安全を守る貴重な人材として、リーダー昇格や給与アップに直結する
- 「事業者探し→基本研修→筆記試験→実地研修」の4ステップ(実務者研修を受けた年で異なります)で取得可能
喀痰吸引の資格取得には強い責任感が伴いますが、それを乗り越えた先には、現場で確かな自信を持って活躍できる未来が待っています。現状のルーティン業務にもどかしさを感じている向上心ある介護士の方は、この資格をキャリアの突破口にしてください。
行動する介護士だけが、現場を変え、自分自身の評価を変えることができます。まずは一歩を踏み出すために、研修機関の資料を取り寄せてみてはいかがでしょうか。
